[001] こわいはなし

7月13日金曜日|||-_||| 百物語|||-_|||本スレ
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/occult/1184327684/l50

43 :影虎 ◆oLBUa5ffU2 :2007/07/13(金) 21:08:36 ID:hnVGtZisO
今まで聞いた怖い話で、一番印象に残っているのが「トイレの花子さん」だ。
女子トイレの左から三番目のドアを三回ノックする。
「はーなこさん、あそびましょー」
と声をかけると、
「はぁーい」
と返事が来る、アレ。
私は一度だけ、花子さんに遭遇した事がある。

小学校一年生の頃。
誰も周りにいなくて、しんとしていたので多分授業中だったと思う。
私は左から二番目のトイレにいた。

用を足していると、三番目のトイレから声がした。
「ねぇ、あなた何組?私のお友達になってくれない?」
私は答えた。「うん、いいよ。私は一組。あなたは?」
「私三組。お名前は?」
「佐藤○○だよ。あなたは?」
「私?私はねぇ」
最後まで聞かずに、用を足し終えた私は外へ出た。
三番目のトイレは空っぽ。今まで誰かが居た形跡すらない。

担任の先生に話したら、それはトイレの花子さんだね、と教えてくれた。今でも私は彼女のお友達なのだろうか。


2007.07.14 | | Comments(3) | Trackback(0) | 連作「百物語 〜弐OO七年・夏〜」

[002] 布団

『 百 物 語 』 〜弐〇〇七年・夏〜
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/occult/1184327979/

30-31 :金魚 ◆N23CfC33RE :2007/07/13(金) 21:13:11 ID:wFYINnwoO
数年前、入院中に知り合ったEさんの話です。
 
Eさんは五十代後半の男性で、職場で急に倒れて病気に運ばれてきたそうです。
そのEさんには同年代のMさんという親友がいたらしいのですが、Eさんが入院中する数ヶ月前に急死されたとの事(死因までは聞いていません)。
EさんとMさんは共に独身で一人暮らし、家も近所だった為頻繁にお互いの家を行き来していたそうです。Mさんが亡くなった日もEさんはMさんの家を訪ねました。
しかし約束をしていたのに呼び鈴を鳴らしても Mさんが出て来なかったので、窓から覗くと布団から半分はみ出た状態で倒れているMさんを発見、急いで救急車を呼びましたが手遅れだったそうです。

Mさんが亡くなった後、部屋を片付けに来たMさんの兄弟から、「大した物はないけれど、もし良ければ遺品を貰ってやって欲しい」と言われ、EさんはMさんの家に行きました。
そしてEさんは、いくつかの遺品の中からMさんが亡くなった時に着ていた布団を頂いたのだそうです。

「気持ち悪くないんですか?」
と兄弟の方に尋ねられたそうですが、Eさんは何故かその布団を自分が引き取らなくてはならないような気がしたのだそうです。

布団を貰ってから、Eさんはそれまで使っていた自分の布団を捨て、Mさんの布団で寝るようになりました。
正直、私はそれを聞いて少し不気味に感じました。

Mさんの布団で寝るようになって以来、ほぼ毎日夢にMさんが出てくるようになったそうです。しかしEさんは、Mさんはきっとまだ死にたくなかったのだろう、色々と未練もあるだろう。そんな愚痴を自分に話したいんだろうと思い、あまり気にはしていませんでした。
けれど、その布団を使うようになってからEさんはよく体調を崩すようになりました。
体重も激減したようで、「癌じゃなきゃいいんだけどなあ」と言っていました。
Eさんの体は次第に衰えていき、入院する少し前にはかろうじて仕事には行っていたものの、仕事中に具合が悪くなって早退する事も多くなっていたそうです。

Eさんの体調は良くならなかったけれど、検査をしても特に異常は見つからず、結局十日程で退院する事になった。
退院前日、余計な事かと思いつつもEさんに聞いてみました。
「布団、捨てないんですか?」
「何で?」
「いや、何て言うか…その布団を使い始めてから体調崩したって思うなら、布団を供養とか処分とか、してみたらって」
「友達の形見だしなあ。布団が悪いって証拠はないしな。まさかあいつが祟ったりするわけないし」
Eさんには布団を処分するという考えは全くないようでした。
「それになあ、あの布団は俺が使わなきゃいけないんだよ。ずっとな」
どうしてEさんがそこまで布団に執着するのかはわかりませんでしたが、多分Eさんは退院後もMさんの布団を使い続けてると思います。
元気でいてくれたらいいなと思うのですが…。


2007.07.14 | | Comments(0) | Trackback(0) | 連作「百物語 〜弐OO七年・夏〜」

[003] トイレ

『 百 物 語 』 〜弐〇〇七年・夏〜
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36-38 :森の人 ◆7FJky9yTMw :2007/07/13(金) 21:15:28 ID:y0aQ28sV0
よく小学校の時、三年生のトイレは呪われてるとか
大鏡の前にずっと立ってちゃいけないとかいう噂があったじゃないですか。
私の小学校でもそういった噂は絶えずあって、時には「学級文庫は読んだら呪われる」など、
馬鹿らしい噂も多々ありました。
私が小学4年生の時、ある噂がとても有名になっていました。
「午後6時になると、人体模型が走り出す」・・・
私は噂にはうとい方なので、そんな噂が有名になってるほうに驚きました。
なんで人体模型が運動場を走るのか、なんで6時限定なのか、
っていうか6時程度なら目撃者ゾロゾロいるだろう、等突っ込み所がありすぎたからです。
しかし私が当時仲が良かった由香(ユイカ)と言う人はアホで、そういう噂は信じて疑わないほうでした。
そして何を血迷ったか、「じゃあ皆(3人でしたがw)で確かめてみよう!」とか言い始めました。
もう一人の友達(春奈(ハルナ))はそれほど嫌そうでもありませんでしたが、私は正直ものすごく嫌でした。
だって、9時とか10時とかならまだしも、6時と言うのが微妙過ぎたからです。
見たいテレビだってあるし、お腹だって減ります。そういった事を二人に言うと、
由香はお決まりの「アンタ怖いんやろ?w」というセリフをかましてきました。
(お前が怖がってるから行くんだろうが!)とか思いつつも、「まぁ6時くらいなら・・・」と承知してしまいました。

その日の放課後、早速3人で運動場の近くの昇降口で待機する事になりました。
と言ってもまだ4時、(これでも時間を潰したのです)あと二時間もあります。
なので一回帰ってせめてカバンを置いてこよう、と言ったのですが、
「その間に人体模型走るかも知れないやろ!!」とか由香は言い出しました。白けた。
外で待ってると夏でも結構寒く、私は「ちょっとトイレ行ってくるね。」と近くの外トイレに行くことにしました。
すると由香が、「あのトイレの一番奥呪われてるんよ。気をつけえや」とか言いました。白けた。
「はは、じゃあ奥のトイレ行ってきますw」とか言いながらトイレに入りました。

入ってみるとなるほど、小さい窓が横にひとつしか無く、蛍光灯は壊れているので中は暗く、
奥となるとほとんど「朝カーテン閉めっぱなし」ぐらいの暗さです。
それでも私は「噂考えた奴誰なんかなー」ぐらいにしか思ってませんでした。


そして私は予告通り一番奥のトイレに入りました。宣言したからではなく、奥が一番キレイだったからです。
そして私が用を足して立ち上がろうとしたら、 出口のほうから、
コンコン。
とノックの音がしました。「誰か来たのか。出辛いなぁ」と思っていると、
コンコン。
とまたノックの音がしました。 近づいています。
そこのあたりから私は「おかしい」と思い始めました。なぜなら、トイレには人の気配はしなかったからです。

コンコン。
このトイレは全部で5つ、あと2個で私の所に来てしまいます。
そこで私は「あ、これイタズラかw」と気付きました。
普通に考えると有り得ないし、あの二人ならそういう事を考えそうだったからです。
コンコン。
私は内心笑いつつ、次近づいてきたらいきなり開けて驚かせようとしました。すると隣のトイレから、

ドンドン。
とノックを誰かが返したのです。

私はもの凄く驚きました。隣に誰もいなかったしwwえ?っていうかドンドンってちょwwwおまwwww
っていうか次こっちだしwwwwwwwは?wwwwこれも計算の内?wwwwwww
みたいになりました。すると出口のほうから、
「おーい○○〜、まだトイレいんの〜?」と春奈の声がしました。
お、今なら出てもいいんじゃね? と私は急速にパニックから回復し、トイレのドアを勢い良く開けました。
「あ、そこに居たんだ。」と春奈がトイレの目の前にいました。
ずっと向こうの出口に春奈がいたハズなのでとても驚きました。
私が「ちょっと足速くない? さっきまで出口のほうに居たんでしょ?」と言うと、
「え?そう?私歩いたんだけど・・・ 普通でしょ。」と言われました。不思議に思うと、

そこは出口に一番近いトイレでした。


2007.07.14 | | Comments(0) | Trackback(0) | 連作「百物語 〜弐OO七年・夏〜」

[004] 死んでいない父

『 百 物 語 』 〜弐〇〇七年・夏〜
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40-41 :Gペンマン ◆UoNspEbUF6 :2007/07/13(金) 21:19:20 ID:QRmWHAJT0
去年の夏に私の知人のTさんが体験した話
Tさんは田舎の父が亡くなったと半ば半狂乱の母から連絡があったので、
葬式関係の話をするため田舎にむかっていた
Tさんの父は母と二人暮しで農業を営むレトロな専業農家で母と凄く仲が良かったらしい
”仲の良い父さんと母さんの事だ、電話口でもかなり鬼気迫った口調だったしきっと残された母さんはショック大きいだろうな・・・”
などと思いながら完全に日が沈んだ頃とうとう両親の・・・、いや今は母親だけの物となった古い家についた
顔を合わせたときどういう反応をすればいいか悩みながらインターフォンを押す

ピンポーン

当時の心境とは対照的な明るい電子音が流れて数秒待つも反応がない
Tさんは母は買い物にでも行っているのだろうと思い、持ってきた合鍵で家のカギを開け中で待つことにした
静まり返った家の中に入り父の部屋を覗くと、電話での母の言い分通りもう動かなくなっている父の姿があった
「あんなに死にそうにも無い元気な父さんがあっけないもんだな・・・」
などと呟きながら一縷の望みを持って脈を測ってみるもやはり脈はなく、呼吸もしていない
「・・・やっぱりだめか」
重い気分になりつつも母の帰りを待つために居間に移動してすぐ母が帰ってきた
「あれ、靴がある。 Tもうかえって来てるの?」
「うん、電話があってからすぐに出発したし」
玄関で声を上げている母を返事をしながら迎えに行く
やはり買い物帰りのようでスーパーの袋を両手に抱えた母は顔に疲れは見えるが、電話口での声ほど切羽詰まってないようなので安心し
「ありゃ、Tも立派になったわねぇ」
「ははっ、一時期どうなるかと思ったけどなんとかなってるよ」
等と世間話をしつつ、母の後に続く形で台所へと到着する
「んじゃ、これから料理作るけどTも食べていくでしょ?」
「うん食べるよ、んでもその前に・・・さ」

いつまでも世間話をしてるわけにはいかないと本題をぶつける
「父さんはだいたい何時ごろ亡くなったの?」
「・・・そのことなんだけどね?」
「うん?」
てっきりこの話題をぶつけた途端にまた半狂乱な状態にもどってしまうかと思いきや、心底恥ずかしそうな顔で

「・・・ごめんねお父さんが倒れたから取り乱しちゃって」
「・・・お父さん生きてるのよ、ほらもう9時近いでしょ?もうきっと居間で夕飯を待っているはずよ」

と普通に、なんの不自然さも感じられないような声で母は言い放ったのを聞き体が硬直し混乱や疑問なんかよりまず言い様の無い強烈な寒気がTを襲った
そう、父親が死んでいるのはつい数分前確かめた自分が良く知っている
なのに母に言わせると父は”生きていて”尚且つ”居間で夕飯を待っているだろう”という
入ってきた情報に頭がついていかないまま、どれくらい突っ立っていたのか分からないが
とにかく母親が夕飯を作り終えすべての料理をお盆に乗せた後
「いつまで突っ立ってるのよ?ほら居間に行って一緒にご飯食べよう?」
と声をかけられ母と一緒に居間へと向かい
・・・居間の扉をあけると

居間の扉から見てちょうど目が合う位置にもう動く事はないはずの父が”あった”

「うわぁぁぁぁぁ!!」
思わず叫び声をあげ、Tはその場から逃げ出したという

後日親戚一同も駆り出して母を納得させちゃんと葬式は行ったのだが
Tさんの父親の葬儀では最初から最後まで不思議なことが立て続けに起こったという
この話をしてくれたTさんは「今を思うと父さんにはよっぽど未練な事があったのかなぁ」と振り返っていましたが
もうしかしたら、死んだ後なにか悪いものに取り付かれてたのかもしれませんね・・・


2007.07.14 | | Comments(0) | Trackback(0) | 連作「百物語 〜弐OO七年・夏〜」

[005] あの夜のミーティング

『 百 物 語 』 〜弐〇〇七年・夏〜
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/occult/1184327979/

43-46 :蟻 ◆GJCUnhVBSE :2007/07/13(金) 21:21:14 ID:0rY4v2J80
 大学生だったころ、私は学習塾で講師のアルバイトをしていました。
 その塾は、交差点角に建っているビルの二階フロアに入っていました。一階にはコンビニ、道路を挟んだ向かいにはガソリンスタンドと、昼間はそこそこ賑わっている場所です。しかし、なにぶん田舎のベッドタウンなものですから、毎日授業が終わって生徒を帰宅させる二十二時ごろにはめっきり往来が減り、辺りを通るのは帰宅の途につく近隣住民ばかりです。

 季節は初夏だったと思います。
 クーラーを入れるほどではないにしろ、蒸し暑い夜でした。全ての授業を終えて生徒を全員帰してしまった後でしたが、空気の入れ替えをするため入り口のドアは開け放したままでした。最後に帰った生徒は私が居残りを命じた生徒でしたので、よく記憶しています。一つしかない入り口の外から、虫の音が聞こえてくるほど静かな夜でした。
 その日出勤していたのは、塾長、男性講師一人、女性講師一人、そして私の四人。最後の生徒を帰し、ミーティングが始まったのは二十二時半ごろだったと思います。フロアの一番奥に背の低いつい立で仕切られた一角があり、そこに講師用のデスク、教材をおさめた本棚が置かれています。授業前後のミーティングはそこで行われるのが通例でした。塾長を中心に全員が座り、男性講師が数学クラスの授業について報告している最中のことでした。
「……ちょっと待って」
 メモを取る手を止め、塾長が顔を上げてこう言いました。
「誰か来た?」
 ――きゅっ、きゅっ
 一瞬静かになったその時、確かに、フロア入り口の辺りからスニーカーのような足音が聞こえてきました。
「忘れ物かな」塾長は立ち上がり、つい立の上に首を出して入り口のほうを伺いました。しかし、
「あれ?」
 と怪訝な声を出し、そのまま入り口の方へ歩いていってしまいました。私達は座ったままだったので、つい立に遮られて入り口の様子は見えず、塾長が戻ってくるのを話しながら待っていました。すると
「ねえ、足音したよねえ?」
 と、フロア入り口の方から塾長の声。
「しましたよー」と私。他ふたりの同僚も
「うん、したよね」「スニーカーだったよね」と同調しました。
 しかし、
「……誰もいないんだけど」
 と、塾長。
 ぎょっとして立ち上がり、私達は全員入り口の方へ向かいました。本当に誰もいません。もちろん、フロアにいるのも私達四人だけ。ミーティングを行うスペース以外に仕切られた空間はありませんので、誰もいないのはひと目でわかります。塾長は入り口から外に出て、階段を降りてみたりエレベーターを覗いてみたりしましたが、やはり誰もいないようでした。
 時間も遅かったせいか、何となく嫌な空気が流れました。が、「オバケだったんじゃないですかー?」「きっと聞き間違いですよ」なんて茶化して、早いことミーティングを再開しようという流れになりました。みんな表面では「勘違いでしょう」という顔をしていましたが、なんとも気味の悪いものを感じていたと思います。
だって、確かに全員、あのスニーカーのような足音が、確かに入り口へ入ってくるのを聞いたのですから。

 再開されたミーティングはやはり淡白なものになり、みんなの(早く帰りたい)気持ちがにじみ出ていたように思います。
 それぞれの講師の報告が終わり、最後に塾長が明日の連絡事項を伝え始めました。各校の期末試験が近い時期でしたので、それに関する連絡だったと思います。
 その最中でした。
 ――きゅっ、きゅっ。
 はっきり聞こえました。紛れもない、スニーカーの足音です。みんなが無言で顔を見合わせました。洒落にならないのは、その足音がさっきのように入り口の方で聞こえたのではなくて、私達を囲むつい立の……すぐ裏側から聞こえてきたことでした。

(そこにいる!)
 瞬間、つい立を背にして座っていた男性講師のF先生が立ち上がり、つい立をひっつかんで裏側を覗きました。私と女性講師のK先生は顔を見合わせたまま硬直していました。
「……何で誰もいねぇんだよ!」
 とても穏やかで、何かと問題を起こす生徒に対しても声を荒げることのないほど温厚なF先生がそんな風に叫ぶのを、その時初めて聞きました。
 どんな風にミーティングを終えたのかはよく覚えていません。
 ただ、スニーカーの足音は、それっきり、聞こえることはありませんでした。

 誰も何も言いませんでしたが、塾長の仕事が終わるのを待って、全員で揃って帰ろうという空気になっていました。
 塾長と、女性講師のK先生にも仕事が残っていたので、彼ら二人は教室の真ん中の生徒席で並んで仕事をしていました。とてもではありませんが、つい立に仕切られたあの空間では仕事をする気にはなれないようでした。
 仕事の終わった私と男性講師のF先生は、ベランダに出て話をしながら待っていました。まばらではありますが、車や人の通るのを見下ろしていると、少しずつ気持ちが落ち着いてくるようでした。
「蟻先生(私)、霊感とかってありますか?」
 ないこともないのですが、あまりそういう話に乗ってしまうと引かれるかなあ、と思い、「不思議な体験はあることにはあるけど、勘違いだったかもしれないしねぇ」と、返事を濁しました。
 するとF先生は、
「俺、ああいうの初めてだったんですよ。幽霊なんて信じてなかったし、霊感とか全然ないって思ってたのに、あんなにはっきり聞こえるもんなんですね」
 そう、確かに、スニーカーを履いている足だとわかるほどはっきりとした足音でした。私は「そうだねえ」と相槌をうちましたが、もう思いだしたくありませんでした。
「俺、最初は子供だと思ってました。スニーカーみたいだったし、塾だし、俺たちが入る前にここの生徒が亡くなったりとかしたんじゃないかなってちょっと思ったんですよ。けど違ったんですねぇ」

 えっ? と思う私を尻目に、F先生はこう続けました。
「ちょっと年のいってるおじさんって感じでしたよね? あの『すみません』って声」

 返事ができませんでした。そんな声、私は聞いていませんでしたから。
 F先生だけに聞こえていたのか、それとも私だけが聞き落としていたのかはわかりません。その夜のことは、後になっても、一度も蒸し返されることはありません
でしたから。

 その塾を辞めて数年が経ちました。私と前後して、F先生も、K先生も相次いで辞めていったようです。塾長はもちろん残っていると思いますが、遠い地に引越しをした今、あの塾がどうなっているのか、私にはわかりません。


2007.07.14 | | Comments(0) | Trackback(0) | 連作「百物語 〜弐OO七年・夏〜」

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