[001] いつもの事

『 百 物 語 』 〜弐〇〇七年・彼岸〜
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31 :有線 ◆zRMZeyPuLs :2007/09/22(土) 21:12:44 ID:pbN5zKxtO
 和泉さんが小学生だった頃の話。
 当時、和泉さんはクラスでは委員長をしており、いつも冷静で頼れる女の子だった。
 放課後、和泉さんはいつものように家へ帰ってくると、そのまま二階の自室へ上がった。
 母子家庭である彼女の母は、仕事で夜にしか帰ってこない。
 特にする事もなく、彼女は半ば習慣になっている勉強をし始めた。

 一、二時間は経っただろうか。
〈――ががっ!〉
 と、自室のドアノブが激しく回された。
 突然の事に、和泉さんは身を竦ませた。
 恐る恐るドアに近寄り、ドア越しに気配を伺ってみた。
 足音も、気配もしなかった。
〈もしかしたら、泥棒? でも、階段上がってくるの気付かなかった。何でドア開けないの?〉
 目まぐるしく思考が回転する。
 じわりと、全身に嫌な汗が滲んだ。
 机に向かったまま、震えながら動けなかった。
 その後、数分置きにドアノブは回された。
 その度に和泉さんは身を竦ませた。
 しかし、ドアが開けられる事は一行になかった。
 ただ、ドアノブを激しく回されるだけ。ドアに鍵はなく、開けようと思えば開けられる筈だった。
 何が出てくるか分からない中、和泉さんはただ震えるしかなかった。


33 :有線 ◆zRMZeyPuLs :2007/09/22(土) 21:15:45 ID:pbN5zKxtO
 最後にドアノブが回されてから、一時間程経った時。
 恐怖で殆ど勉強が手に着かない中、和泉さんは喉が渇いているのに気付いた。喉がじりじりと焼け付くように痛む。今更ながら、飲み物を持って来なかった事を激しく後悔した。
 時間が経つにつれ、喉の渇きは増していく。
 何度かの逡巡の後、和泉さんは下に降りる事に決めた。
 思い切ってドアを開く。
 何もいなかった。
 ほっとしながら階段へと足を向けた。
 視線が階段の中程で固まった。
 顔が生えていた。
 ただし、鼻から上だけの。
 無表情に和泉さんを見つめている。
 顔の幼さから、幼稚園児くらいに見えた。
 ただただ、和泉さんを見つめている。
 後退りながら、部屋へ戻る。
 部屋に戻るまでの間、子供から目を離せなかった。
 目を離したらいけない。
 直感がそう告げていた。
 たかが数メートルが限りなく長く感じた。
 緩慢な動きでドアを閉める。
 暫くして、自分が息を止めていたのに気付いた。
 その場にへたり込んだ。
 痺れたように足に力が入らなかった。
 結局、母親が帰ってくるまで和泉さんは部屋から出る事ができなかった。
 その後、母親に階段を確認してもらったが、何もなかったという。

 どこか宙空を見つめながら、
「ま、今じゃいつもの事だから……」
 と、和泉さんはどこか諦めたように呟いた。

 現在も、彼女はその家に住んでいる。


2007.10.01 | | Comments(0) | Trackback(0) | 連作「百物語 〜弐〇〇七年・彼岸〜」

[002] 赤い帽子

『 百 物 語 』 〜弐〇〇七年・彼岸〜
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35 :イノ ◆eTvJnGSoX6 :2007/09/22(土) 21:17:30 ID:ykODsTqA0
ハイキングに、小さい頃に両親と行ったことがある。何の変哲もない、ケーブルカーも引かれてるような低い山。子供の遠足でも行くような山。

「お父さん、あの人、頭全部に赤い帽子被(かぶ)ってるよ。変わった形だね。」
「誰も居ないわよ、赤い帽子をかぶってる人なんて。」
「そうだよ、すれ違う人自体が殆どいないじゃないか。」

その時、父も同じ、頭全体を覆う赤い帽子を、被っているように見えた。
実際は、焦げ茶色のつば広帽子だったのだけれど。


3ヵ月後、父が死んだ。頭部の出血が原因だった。
あの時、自分が見たのは、赤い帽子ではなくて。
本当は、赤い帽子ではなくて…


2007.10.01 | | Comments(0) | Trackback(0) | 連作「百物語 〜弐〇〇七年・彼岸〜」

[003] おとめ座の部屋

『 百 物 語 』 〜弐〇〇七年・彼岸〜
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40 :◇bestyu/777 :2007/09/22(土) 21:24:25 ID:iBQL8QWS0
これはまだ私が小学校の頃のお話です。
桃沢で合宿をすることになり、そこでの説明の話。
それは、こんな奇妙な事を云っていました。
「おとめ座の部屋には入らないでくれ」と。私はそれを聞いて、変な気持ちで説明の続きを聞いていました。
その説明曰く、おとめ座の部屋で昔、ある泊まった学校が居て、その学校の女の子がいじめられていて、キャンプ場でもいじめられていて耐え切れず、おとめ座の部屋で首を吊って死んでしまった、と。
それ以来、その部屋ではその子の霊が出て、使わないようにしてあると。
そして部屋移動。
私を含む、女子のクラスメイトで泊まった部屋はそのおとめ座の部屋の向かいでした。
なんだか嫌な気もしましたが、気にしないようにしようと思いました。
そして夜。
なんだかその部屋から嫌な気がするのです。


41 :◇bestyu/777 :2007/09/22(土) 21:25:29 ID:iBQL8QWS0
それはドアが開けてあったせいもありますが、昼間通った時より更に嫌な気がするのです。
そして次の日。
その部屋の前にクラスメイトの子たちがざわざわしていました。
何かというと、そこの部屋で昨晩、Aくんたちがふざけていたというのです。
私はAくんたちはよくふざけることで有名なことを知っていたので、気にしないようにしていました。
そこで、他の仲の良い子と色々話していると、クラスで陰陽師とかそういう系のものが好きな子たち二人がきて、霊を沈めるというのです。
(それはただ、正座になり謝ってお経を唱えていただけですが)
そんな方法でも何も無かった訳ですが、やはり私は霊感のせいか、嫌な気がするのです。
それもベッド側から特に強く感じていました。
結局、桃沢から帰ってくるまで嫌な気がしていました。


2007.10.01 | | Comments(0) | Trackback(0) | 連作「百物語 〜弐〇〇七年・彼岸〜」

[004] こんばんは

『 百 物 語 』 〜弐〇〇七年・彼岸〜
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45 : ◆urufi/Tr1A :2007/09/22(土) 21:27:51 ID:1Gmq9Qqi0
高校時代に2度家出をした事があって。
それでもまぁ深夜12時になるかどうかくらいには帰るヘタレっぷりで。
まわりは住宅街だし、いつも頭に血が昇ってるからお金なんて持たずに出ちゃうし、行くところと言えば近所の友達の家くらいしかないってのが理由なんだけど。
で、1度目か2度目か忘れたのだけど
送ってあげるからそろそろ家に帰った方がいいよ、と友達に悟されて夜中の11時頃に家に帰る事に。

友達が自転車引きずって徒歩の自分に合わせてくれて夜道を歩く。
友達の家からはまっすぐ、大きな通りを渡ってそのまま200mもすれば自分の家。
喧嘩した手前家に帰るのをためらっていて足取りが重かったように記憶してる。

家に帰ると心配そうに待っていた父親と和解。
今度は大通りまで友達を送っていく事に。今度は二人とも自転車。

大通りまでは緩やかな下り坂。
外灯も街灯もあるしそんなに暗いというイメージはない道なのだけど一箇所だけうす暗い部分があって。
そこでなんとなく気配のようなものを感じた気がしたんだけどまさかこんなくらい時間に誰かいるわけじゃないし少しくらかったからといって勝手な妄想乙って事で自転車だったこともあって完全にスルー。

大通りまでついて友達と少しだけ喋ってお互いの家に。今度は家までは上り坂。
父親と和解していて余裕もあったし今日一日を振り返りつつ自転車を引きずって帰る事にして歩き出きだした。

ぼんやり歩いていると前方から人が歩いてきて会釈されたような気がした。
つい昼間の癖で会釈を返してその人が通り過ぎるかどうかくらいで「こんばんは。」と反射的に挨拶をした。

で、ところで暗くてよくわからなかったけど誰?と思って顔をあげたついでに振り返ったのだけど誰もいなくて。
ぽっかりと薄暗い部分の道ががそこにはあった。

慌てて自転車に飛び乗って全力疾走。
家に帰ってまた心配そうに玄関で待っていた父親との会話もそこそこに気のせい、きのせい、絶対気のせい!と思いながらその日は就寝した。

で、少しの間、日が暮れてからはその道を通らなくなったくらいで今ではなんの考えもなしにその道を何度も通るけどもちろん何も起こらない。


2007.10.01 | | Comments(0) | Trackback(0) | 連作「百物語 〜弐〇〇七年・彼岸〜」

[005] 新聞紙

『 百 物 語 』 〜弐〇〇七年・彼岸〜
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47 : ◆04cklb.vK. :2007/09/22(土) 21:29:59 ID:JwuUkh9y0
俺のじいちゃんが死んでから最初のお盆での話。
田舎にばあちゃんと二人で住んでいるじいちゃんは、数十年の間ずっと病気で寝たきりだった。
その数十年の間、ずっとばあちゃんが一人で面倒を見ていた。
死を見取ったばあちゃんは、最期の瞬間は壮絶でありながら、あっけなかったともいう。
家のベットでしばらく苦しんだ挙句、ポカリスエット1リットル程を丸々一気に飲み干したと思ったら、
その後はまるで眠るように死んで言ったらしい。
じいちゃんは寝たきりの間満足に喋れなかったから、あまり俺はじいちゃんのことは知らなかったんだけど、
それでも当時中学になったばかりの俺にとっては、ショッキングな出来事だった。
それでもお葬式を終えて、一年程も経ったころには、じいちゃんが死んだことも記憶から薄まりかけてころ、
俺は家族と一緒に、じいちゃんの仏壇に手を合わせに田舎に帰った。
その日は普通に何の変哲も無く過ごした。いとことゲームしてから焼肉を食べて、布団で寝た。
次の日の朝、少しおびえた表情をしたばあちゃんが、起きたばかりの俺に
「ほれ、見てみ。きっとおじいさんが帰ってきはったんやで」
といいながら、新聞紙を手渡した。それはばあちゃんが寝る前に、仏壇に何気なく置いておいていたものらしい。
ばあちゃんが差し出した新聞紙は奇妙なことにぐっしょりと濡れていた。
夏の蒸し暑い日だったから、湿度のいたずらだろうと思うこともできたかもしれない。
それでも迷信を信じないタイプの俺がばあちゃんの言うことを、少し信じてしまったのは、
新聞の湿った後が、ぼんやりとだけど横たわった人間の形に見えたからだ。
もちろん、ただの偶然かもしれない。
でも、じいちゃんが死ぬ前に、水を一気に飲み干したことを思うと、今でもひょっとすると・・・と思ってしまう。
俺はじいちゃんが死んだところも、棺おけに入れられるところも見ていない。
俺がばあちゃんの家にいたときは、既に棺おけに入れられていたのだ。
じいちゃんはかなり苦しんだそうだ。病気と最期まで闘ったのだろう。
じいちゃんが葬儀屋さんに運ばれた後のベットには、新聞紙と同じような汗の跡が残っていたんじゃないだろうか?
ばあちゃんのおびえた表情を思い出すと、そんな光景を想像してしまう。

2007.10.01 | | Comments(0) | Trackback(0) | 連作「百物語 〜弐〇〇七年・彼岸〜」

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