お返し
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part71∧∧
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/occult/1377875509/l50
696 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2013/11/13(水) 17:34:53.14 ID:VC/zp4PI0
山仲間の話。
知己の山小屋に泊まり、酒盛りをしていた夜のことだ。
玄関の方で物音がした。
何だと様子を見に行くと、森に白い物が吸い込まれていくのが見えた。
汚れた包帯の束だった。
何か透明な筒にでも巻かれているかのように、ぐるぐる巻きになった布の筒が
ふらふらと空中を漂っている。
小屋から漏れる明かりで見えたのは一瞬で、すぐに木々の間に消えてしまった。
「どうした?」
振り向くと、小屋の主がつまみを下げて倉庫から戻ってきていた。
奇妙な物がいたと、今見たもののことを話してみる。
主は何とも言えない顔になったという。
「かなり昔のことだがな、小屋の傍に猿が倒れていたんだ。
年取ってて酷い怪我をしてた。
群れからはぐれたか、追い出されでもしたんだろう。
つい仏心を出しちまってな。
手当てして包帯まで巻いてやった。
しばらくは小屋に居ついていたんだがな。
その内、傷が癒えたようで、フイッと小屋からいなくなっちまった」
697 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2013/11/13(水) 17:35:34.08 ID:VC/zp4PI0
「野生動物ってのは大概、すぐに包帯なんぞ毟り取って外してしまうんだがな。
しかしアイツ、何を思ったのか包帯を外さなかったらしい。
それから毎年、手当てした頃になるとお返しに来るんだ」
そう言って玄関を開け放つ。
扉のすぐ外に、さほど多くはないが、山の果物や茸が丁寧に置かれていた。
へえ、猿の恩返しか。
そう和やかな気持ちになったが、一点だけ引っ掛かる。
包帯ははっきりと見えたのに、その中身の猿の姿は何故見えなかったのか?
「随分と前のことだって言ったろ。
まず、あの猿介は当の昔に死んでる筈だ。
あの時分でかなり老けてたからな。
お前が見たのは、真っ当なモノじゃないんだよ」
主はしばらく森の奥を見つめていた。
「もう成仏した方がアイツのためだと思うんだがなぁ」
寂しそうにそう言いながら。
2013.11.19 | | Comments(8) | Trackback(0) | ■民話・伝承
